本当に!ホグワーツからの手紙が来た時は目が見開いた。





金盞花クローバー 01








は自室の机で本を読んでいた。

暖かい日差しが気持ちよくて、窓を開け放してついつい瞼も重くなる。

そんな時だった……一羽の梟が窓から飛び込んで来たのは。


「なっ何!?」

慌てて机から飛び退ると、何でも無い事だと言わんばかりに梟が机に降り立った。


良く見れば、梟は少々厚みのある手紙を持っていて、ポスっと机にソレを放り出す。

「何これ……?」

そっと手を伸ばすと、満足したのか梟はあっと言う間に来た窓から去っていく。


持ち上げて両面を確認してみると、羊皮紙の封筒にはエメラルド色のインクで宛名が

書いてあり、返した側には紋章入りの紫の蝋で封印がしてあった。

真ん中には大きくHと書かれ、その周はライオン・鷲・穴熊・ヘビが囲んでいる。



『サレー州  リトル・ウィンジング

    プリペット通り二番地

    二階の日当たりの良い子供部屋  様』



何なのだろうか、切手すら無く梟が届けた手紙。

何より不可思議な宛名には眉間に皺を寄せる。

しかし、このままにするのもアレだ。

もう一度裏返すと、ぺリっと蝋を剥がし手紙を取り出した。



『親愛なる殿





この度、ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されたことを心よりお

喜び申し上げます。

教科書並びに必要な教材のリストを同封致します。

新学期は9月1日から始まります。

つきましては、7月31日必着で梟便にてのお返事を
お待ちしております。



敬具    副校長ミネルバ・マクゴナガル』

「魔法魔術学校?!」

は其の手紙を握りしめると、慌てて部屋を飛び出し、階段を駆け下り、リビング

ルームへと駆け込んでいった。







++++++







それからはあっと言う間だった。

両親はかなり大喜びで、自身初めての事だらけで、楽しくてしかたなかった。

ダイアゴン横丁と言う魔法使いの街に初めて行った時も、次々と現れる物の多さに

一日ではとても見きれなかった。



+++

その日のしめに行ったのはオリバンダーの店。

杖屋だ。


何と言ってもが一番興奮したのは、杖選びだ。

紀元前382年から創業しているらしい店に、胸をドキドキ高鳴らせて店のドアをくぐ

っていく。

バクバクと音をたてる心臓を押さえながら、一歩前に出ると……。

暗い影から1人の翁が現れた。

一瞬心臓がひっくり返りそうな程弾んだが、無理やり押さえ込み笑顔を向ける。


「こんにちわ」

かなりいっぱいいっぱいだ。

叫ばなかった自分を褒めたかった。



奥から現れた翁……オリバンダーは、を見て

「いらっしゃいませ」

と呟き、メジャーを手に近寄ってきた。

の驚きには気がつかなかったようで、いたって普通の態度みたいだった。

しかし……そんな事は関係なく。

何故か、何処かで見たような気がする。

は、変なデジャブを感じながら、オリバンダーの次の言葉を待った。


「おや、何処かでお会いしましたかな?」

どうやら翁も感じたらしく、首を傾げたが、思い直したように口を開いた。

「……いやいや、すみませんな。杖腕を……」

此れは本で読んだ。

利き腕を出せば良いのだ。

は利き腕を伸ばす。と、メジャーが色んな場所を計っていく。

「うむ、やはり何処か似ていますな」

「えっ?」

「私は売った全ての杖を覚えています。もちろん売った方も……あなたは一度お会い

した。そんな気分になったのですよ」

1人ごとの様に呟いた。

「不思議な事に、先程来たお客様もそうじゃった」


自分と似たようなデジャブを感じていた事に、少し驚いたが、はメジャーが鼻の

穴にやってきた所で思考を中断させた。

「あっあの!」

慌ててオリバンダーに呼びかける。

「もうよい」

オリバンダーもはっとしたように声を出した。

「さて、この杖はどうかな?」

奥の棚の一番上の箱を取り出したオリバンダーは、そっとにその杖を手渡した。

「柳の木にドラゴンの琴線振り応えがある」

はそれを手に取ると、軽く動かす。

ガシャーン

「……いかんいかん」

「……」




一本目は見事に杖に嫌がられたみたいだ。





txt_44_back.gif txt_44_top.gif txt_44_next.gif