金盞花クローバー 02







ありれから数本目の杖だ。

振るたびに起こる突発的に出来事に、ハラハラしつつ、オリバンダーの言葉を

待った。


「二十七cm、柳の木で出来ていて、杖芯はユニコーンの鬣。振りやすく妖精の呪文

にぴったり」


そっと手を伸ばす。


「……」


息を呑み、今度こそ……ゆっくりと手を振った。


途端に広がる、爽やかな風。

辺りに花の香りが広がっていく。






「ブラボー!!」

オリバンダーが叫んだが、自身も感動して杖を持ったまま笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます」


は杖の代金7ガリオンを支払うと、外で待つ両親の元に走り寄って行った。











その後ろ姿を、目を見開きみつめる姿がひとつ……。

その少年は呟いた。


「やっと……――」

言葉は風にまかれ、溶けるように消え、誰にも聞かれることは無かったけど。



++++++






とうとう、九月一日。

ホグワーツへ向かう日がやって来た。

昨日までに準備した荷物をを車に乗せ駅へと向かう。






、頑張ってくるのよ?」

駅に着き、入り口だと聞いていた9番線と10番線の間の柵の前まで来ると、母が寂し

そうに呟き。

「手紙まってるぞ?」

父が笑顔で頭を撫でてきた。

も笑顔で返す。

「うん。何処の寮かわかったら直ぐに手紙書くわ!」

「待ってるわね」

母と父の笑顔に見送られ、は柵に向かって歩きだす。

不安だったから、目を瞑って小走りに勢いをつけて突き抜けた。



「……っ」



ぶつかる!?そう思って怖かったが、にその衝撃が伝わってくることは無かっ

た。

そのかわりに聞こえてきたのは……。

自分の心臓の音が煩く聞こえ、ザワザワと言うざわめきと、何か動物の鳴き声が

ワッと耳に流れ込んで聞きた。




そっと目を開ける。

「わぁ……」

感嘆の声が零れ出た。

紅色の蒸気機関車が視界いっぱいに広がり、沢山の人で溢れていた。


そんな中を、は縫うようにして機関車の入り口までカートを引っ張っていく。


が、此処で問題が発生した。

荷物は段差に引っかかり、さっぱり持ち上がらない

ギュウギュウと荷物をひっぱり上げていると、ふと、視界に陰が出来た。

「手伝うよ」

「えっ?ありがとう」

驚いて顔を持ち上げると、背の高い黒髪の青年が目に飛び込んできた。

物腰がやわらかそうな好青年で、ネクタイを見れば黄色と黒ののネクタイをしてい

て、先輩みたいだ。

「どういたしまして」

声まで爽やかだった。

慌ててお礼を言う間に、荷物は列車に積み込まれていて、もう一度お礼を言う。

「どういたしまして」

「それじゃあ、もう大丈夫かな?」

「はい!」

「そっか、ならもう行くよ」

手をふってその人とは其処で別れた。

此処に来て初の知り合いだ。

「名前、聞いとけば良かったわ」

ちょっと残念。

そんな事を考えながら荷物に手を伸ばす。

「爽やかな王子様な感じね?」

は独り言を呟くと、荷物を引っ張って、目当てのコンパートメントへと向かっ

て行った。

列車はまだまだ発車までに時間がある。

席が取れた事にほっと息を着くと、コンパートメントの座席へと寄りかかった。

「本でもよんでようかな……」

この間、教科書と共に買った初級の呪文集を開き、読み始める事にした。






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