金盞花クローバー 04







いつの間にか時間はたって、汽車はもうすぐホグワーツへと到着するらしい。

途中、2人で楽しく話したほかに、特に大騒ぎする様な事件は無く、ただ、

なにかあったかと言えば、なんだか列車内の噂で、車が空を飛んでいたらしい。

は見てはいないが、結構な人が見たらしいのだ。

騒いでいる声があちらこちらから聞こえていた。



ローブに着替え、ワクワクする気持ちを押さえ込み、窓の外を見た。

外は暗くなり始めている。


「ドキドキするね」

「うん、何処の寮になるのか考えたらもう心臓がひっくり返りそう」


ジニーはどうしてもグリフィンドールが良いらしい。

お兄さんはみんなその寮だから、なおさらそう思うのだそうだ。

はグリフィンドールにたいする熱い思いを聞きながら、自分の入る寮について

考えてみた。

何処に入るのか、もし大丈夫なら、せっかく仲良くなったジニーと同じ寮が良い。

そんな事を考えていると、列車はゆっくりと速度を落とし、静かに停車した。



アナウンスが流れる。

どうやら無事に到着したみいだ。




+++++




「あいたっ!」


ドスンと人にぶつかられ、前につんのめる。

後ろからは人の波が押し寄せて、あれよあれよと言う間にジニーと逸れてしまった。


「……はぁ」


心細いが、今は「イッチ年生、イッチ年生」と呼ぶ、前の方の声に向かって進むしか

なさそうだ。

流れに沿って、徐々に進んでいくと、ゆっくりと視界が開けた。

少し道幅に余裕が出来たのか、進む速度の差でまとまりでは無くなったからだろう。


「ふぅ……」


息を吐くと、先ほどの声の主が、眼前に現れた。

大きな体の人で、でも目がとっても優しげだ。

なんだかはほっとして、ちょっとだけ焦りが無くなったのがわかった。


「ほれ、お前さんも、遅れるなよ」


ポンポンと背中を叩かれ、自分が随分と最後尾に居る事に気がついた。

素直に頷くと、ごつごつした細い険しい道に足を踏み入れる。



道は思いの他良く滑り、つるつると足を取られて、うまく進めない。

苔むした岩は、前の人の足でぬるぬるになっていたし、でこぼこ道は

歩きづらい。


「きゃっ!」


足がズルっと思いっきり滑った。転ぶ!

そう覚悟した瞬間、何かにぐいっと引き戻される。

誰だろうか、おそるおそる後ろを振り返る。

後ろに居るであろう人がひっぱってくれなかったら、せっかく新品のローブは

ドロドロだったかもしれない。


「あっありがとう」


顔を見る前にお礼を言って、そっと顔を上げ、その人を見上げた。


「いや、お礼を言われるような事じゃないさ。大丈夫だった?」


丸メガネに、少し癖のついた髪の毛の少年が、キラキラ笑顔でを見ている。


「手、貸すよ」


少年はそっとに手を差し出すと、が返事をする間も無く、先導する様に

歩き出した。


「あっ!あの」

「ん、何?」


まるで道がなんとも無いかのように、歩く少年に引っ張られながら、は言いよどむ。

何か言おうとしていたのだが、何を言えばいいのか、思いつかなかった。


「えっと……ありがとう」


やっと出てきた言葉は、お礼の言葉で、少年はクスリと笑う。


「どういたしまして、でも僕が好きでこうしてるんだから、気にしないで」


その顔は妙に嬉しそうで、も笑顔で笑い返した。

今日2人目に出会えたこの少年ともいい友達になれるだろうか。

いや、なれる。

もなんだか嬉しくなってきて、もう一度笑顔を浮かべた。





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