Thought beyond time 03.2
いよいよ今からマルフォイ家へ行こうとしている。
は少しの荷物と、あの指輪を確認すると、ダ
ンブルドアに向き直った。
「行ってきます」
「楽しんでくるんじゃ」
ダンブルドアはの頭を撫でるとゆっくり手を
離した。
「ダンブルドア先生。私そんな子供じゃないですよ!」
なんだか恥ずかしくて、ぷぃっと顔を背ける。
うれしいけどくすぐったいのだ。
「そうかの?わしにとってはまだまだ可愛いがのぉ」
楽しげに笑うダンブルドアに、はもういいで
す!と言うと、フルーパウダーを手に握りこんだ。
絶対に口では勝てない。
まあ、このやり取りだってにとっては楽しい
のだ。勝つも負けるもあまり関係ない。
フルーパウダーを投げ込んだ暖炉はサッと色を変える。
「じゃあ、行ってきます」
お互いに手を振ると、は色を変えた暖炉の中
に飛び込む。
はっきりと、灰を吸わない様に気をつけて。
「マルフォイ家」
そう言い終わるか否かのうちに、の姿は暖炉
の中に吸い込まれていった。
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ぐるぐる回る景色。たまに見える他人の家の暖炉。
酔ってきた・・・。
の顔はあっという間に真っ青になった。
「まっまだかな・・・・ぅう」
これには一生なれないと思う。
何か気をまぎれる事を考えよう。
何度も考えたけれど、あの人は誰なのか、トム・リド
ル?でも・・・。
それとも誰?
危険にならないと出てきてくれないのか。
は指にはまった指輪を眺めてギュッと手を握
りしめる。楽しみな反面、この指輪に少しでも近づけ
るチャンスに緊張もする。
考えても考えても、堂々巡り。
ただ会って見たい、もう一度。
なんて乙女!
自分で考えて赤面してしまう。
そんな事を考えていたら、突然暖炉から吐き出された。
やっと着いたのだ。
着いたのは嬉しいけれど、転げてない程度の加減は無
理ですか?暖炉さん。
「これはこれは、よくきた・」
うつ伏せに倒れたの少し先、嫌な笑みを浮か
べたルシウス・マルフォイが腕を組んで立っていた。
倒れこんだに手を差し伸べる事もしない。
「こんにちわルシウスさん」
少しムッとしながら、は起き上がろうと手を
ついた。
すると、まるで今気がついたとでも言うように、手を
差し出す。
「これはすまない、手を」
「いえ」
すでに起き上がったは、体や手の煤をパタパ
タと業とらしく叩くと、手を差し出す。
「今日からよろしくお願いします。ルシウスさん」
「いや、ここを自分の家だと思ってくれていいい」
手を取り握手を交わすが、全然よろしくな雰囲気では
ない。
むしろ険悪。
と、ふいにルシウスの指が、の指にはまった
指輪に触れる。
「・・・・っ!」
すると、弾かれた様に、ルシウスはの手を離
した。は呆然とルシウスの顔を見つめた。
痛そうに歪んだ顔。
何があったのだろうか。
痛みに歪んだ顔を取り繕うと、ルシウスは人のよさそ
うな顔でにっこりと笑う。
「さぁ、部屋に案内しよう」
まるで、何も無かったかのようだ。
はと言えば、ただただ呆然と、ルシウスのう
ながすまま後ろをついて歩き出した。
