Thought beyond time 08.








次ぎの店へと移動する途中、サラザールの思考が僅かに
伝わってきた。

懐かしい


それとも悲しみ……


複雑な感情が絡み合ったようなソレはの胸を
キュっと痛ませた。



それを誤魔化すように、は明るく声を上げた。


「ねぇサラ?アイス食べてから次ぎのお店に行きたいな!」

(駄目だ)

きっぱりとした否定の声が帰って来たけれど、先程まで
の雰囲気はすっと消えていった。

その事に安堵し、エヘへと笑い声を上げる。

そんなやり取りをしている内に、いつの間にかマダム・
マルキンの洋装店へと到着していた。

「いつのまに?」

溢す様に呟けば、サラが呆れたように返してきた。

(私が方向を指示してたろう)

は、無意識に進んでいた事に驚きつつも店の
ドアへと手を掛けた。

店内に入ると店の奥から、ずんぐりとした愛想の良さそ
うな魔女が小走りにやって来た。

「お嬢ちゃん。ホグワーツなの?」
はいと答えれば、あっと言う間に台の上へと案内される。

だが、直ぐに店のドアが開く音が聞こえてきて作業が中
断される。



「少し待ってて下さいね」


そう言うとマダムは小走りにドアへ向かい、
と同じ様に1人の男の子を連れて入って来た。

青白い顔に尖がった顎、素敵にシルバーブロンドそして
デコ!!!


「ドラコ!!」


現れたのはドラコ・マルフォイだった。

じゃないか!?一緒に行くとばかり思って
いたのに、父上に別だと聞いた時は驚いたぞ」

青白い顔を、心なしか赤くして叫ぶドラコはなんとも可
愛らしい。

「1人なのか?」

「うん、まぁそんな感じ」

実際はサラがいるので1人では無い。


曖昧に笑って誤魔化していると、カランとドアが開く音
が再び聞こえてくる。

マダムは達に待つように言うと、また小走り
にドアへと向かっていく。

其の行為に少し苛立った様子のドラコを宥めつつ、
はそっとドアの方へと目を向けた。

ハリー・ポッター

この本の主人公だ。

ドラコとハリーの初対面に居合わせた、自分のタイミン
グの良さに拍手を送りたい。


ボーっと感動しているうちに、ハリーも台の上に乗って
おり、ドラコが元々高い鼻をニョキニョキ伸ばして自慢
をしている所だった。


「僕の父は隣で教科書を買っているし、母はどこかその
先で杖を見ている」

ハリーに話す様は、いつもの10割り増しで気取った話し
方をしている様な気がした。

初対面だからだろうか?

は1人むううと唸っていると、サラが馬鹿だな
と呟くのが聞こえてきた。

少しムッとしただが今はドラコ達の会話に集
中する。


「君は箒を持っているのかい?」


「ううん」

そう答えたハリーとバッチリ目が合った。


「……えっと、こんにちは」

「こんにとは」

ぎこちなく挨拶を交わすと、ドラコがすかさず割り込ん
できた。


、やっと気がついたのか?さっきも声を掛
けたのに」

世話が焼けるとでも言うように肩を竦められ、声を掛け
てたのかと少し驚く。
は全然気が付いていなかった。
ボーっとハリーを見ていた時だろうか?


「ごめんドラコ」

「まぁいいさ、だからな」

いったいどんな評価だろうか、が自分の評価
に一抹の不安を覚えたのは、言うまでもない。


「そうそう、君はクィディッチはやるのかい?」

そんなを置いて話は進んでいく。


「ううん」

「僕はやるよ−−父は僕が寮の代表選手に選ばれなかっ
たらそれこそ犯罪だって言うんだ。僕もそう思うね。
君はもう何処の寮に入るか知っているの?」


「ううん」

心なしかハリーの顔がどんどん曇っていく。
否、確実に曇っている。

「私も知らない」

ついつい口出ししたが、ドラコは一瞬戸惑って話し出す。
ハリーはを凝視したのち、慌ててドラコへと視線
を戻した。

「まあ、本当の所は、行ってみないど。そうだろう?
だけど僕はスリザリンに決ってるよ。僕の家族はみんな
そうだったんだから……ハッフルパフなんかに入れられ
てみろよ。僕なら退学するな。そうだろう?」

「ウーン」

「ハッフルパフだって良いところはあると思うよ?」。







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