Across space-time and 03.








「やっやっと着いた・・・」

あれから暫く歩いて歩いて歩いて・・・・。
孤児院に着いた時にはもう夕暮れ時になっていた。




「まったく。自分に呆れる・・・」



溜め息一つこぼし、扉の前で深呼吸。
は覚悟を決めると、扉を二つノックした。

すると、直ぐに女の人の声が返って来る。

忙しく動く足音が段々と大きくなって、ガチャリと音
を立てて扉が開いた。



「はい、何の御用ですか?」


まだ若いが、少し痩せ気味の女性が顔を出した。
言葉は何かに追われる様に急いでいて、後ろからこの
人の名前だろうか、呼ぶ声が聞こえてきた。
コール、と言う名前らしい。
その声に大きな声で答えると、の方へと向き
直っる。

「ちょっと立て込んでいまして・・・」

「そうですか。忙しいところ申し訳ないです」

「いえ、こちらこそ」

の方へ向いてはいても中の様子を盛んに気に
している様で、目線が後ろへと走っている。



「突然なのですが・・・」


しかし、そんな事気にしていては話も進まない。
は本題を切り出した。


「ここに私の家の親戚が預けられていると聞きまして。」



「引き取りに着たんですか?」

「はい」

即答した。
今日にでもと思っているのだから当たり前だ。
一方、コールは驚いて固まっている。
あまりこんな出来事はないのだろう。


「・・・・そうですか、事務室にご案内するので着い
て来て下さい」



コールは大きく扉を開けると、を中へと招き
入れた。
中に入ると子供の声があちこちから聞こえて来た。そ
れを注意したりあやす声も聞こえる。




「私はコールです。貴方は?」

「すみません。と言います」


「その苗字の子は此処に居たかしら?」


独り言のような呟きだったが、はどきっとし
た。思わず自分の本名を言ってしまうとは・・・。
冷や汗が背中を伝っていく。



「あっ、分家なので」

少し声が裏返った。


「そうなんですか・・・」


コールは少し顔を赤らめると歩調を速めた。
やっぱり独り言だったのかもしれない。


事務室に着くと、は少し古ぼけた椅子に座る
ように勧められる。
お礼を言うは椅子にチョコンと腰を掛けた。

「今、院長先生を呼んできます」


そう言うと、コールは踵を返してドアの向こうへと
消えていった。



それからほんの数分で院長先生がやって来る。
コールも一緒だ。


「こんにちわ」


「こんにちわさん」


「先生お茶此処に置いておきます」
コールはそれだけ言うと部屋から出て行った。

紅茶らしく、いい香りがしている。



「それで。ご親戚の方だそうですが、どの子のなんで
しょうか」

穏やかなゆっくりな喋り方で、笑顔で聞いてくる。
顔も穏やかで、は少し緊張していた心が
ほぐれるのを感じた。
これなら大丈夫。うまくいくだろう。


「はい。トム・・・トム・マールヴォロ・リドル。と
言う名前だと」



「まぁ。トムですか?」


「ええ。ずっと探していたんです」


「そうですか」

院長先生は困った様に笑うと、

「今日にも連れて?」


「出来るなら。でも、準備がまだ整っていないので、
それからでも」

院長先生はうんうんと頷くと立ち上がった。


「取り合えず会いますでしょう?」

「はい」

はっきりと答えた。
もちろん会わないわけが無い、ニッコリと笑うと
は院長先生の後に続いた。







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