Across space-time and 07.








暫くの間、2人してリオの走った先を眺めていたけれど、
いつまでもこうはしていられない。


「取り合えず食堂行って何か食べよっか」

はリドルの手を引くと、廊下を食堂に向かっ
て進んでいく。

「リドルは何が食べたい?」


今作れる物は限られてるけれど。
そう付け加え手の先にあるリドルの顔を覗き込む。


「別に……何でも良い」


「じゃあオムライスは?」
は自分の食べたい物を上げてみる。

「それで良い」

すんなりOKが出たところで、丁度良く食堂の入り口に
着いた。

「じゃあ、此処で少し待ってて。作って来るから」


そう言い残すと、素早い足取りでキッチンへと小走りに
向かった。






++++++






は出来上がった料理をリドルの前に並べ、満
足げに自分の席へと座る。

「さぁ、食べよう」

ホカホカと湯気を出しているオムライスは、とろけそう
な卵が上に乗っていて、中々の仕上がりだ。
リドルとの初食事だからなりの力作である。


さっそく食べようと。

「いただきます」

手を合わせていただきますを言うと、リドルが怪訝そう
な顔で見て来た。


「どうしたの?リドル」


「何?今のイタダキマスって」



いただきますはいただきますである。
は何の事か意味がわからず、逆にリドルを見
つめ返しハッとした。



(こっちじゃいただきますって無んだっけ?だから翻訳
されなかったのかな…)



「ご飯を食べる前の挨拶みたいな言葉かな?」

とて、詳しく言えと言われると困ってしまう。
漠然とした意味でしか分からない。

「ふ〜ん、魔法かいではみんなそう言うの?」



「え〜っと、日本の言葉だから、魔法界では言わないと
思うよ」


日本の魔法界では言ってるかもしれないが此処では言わ
ないはずだ。
の曖昧な返事に少し不満げにしていたリドル
だが、それが本題では無いらしい。


「まぁ良いけど、僕も言ったほうがいいの?」


「どっちでも良いよ、私のは癖みたいな物だし」

絶対の決まりごとでは無いし、強制する事では無い。

そう思って言葉を続けようとした所に。

「・・・・・・イタダキマス」


リドルは、つっかえながらもいただきますを言って、目
の前のフォークを手に取る。

それを呆然と見ていたが、段々と顔が綻んで来るのが自
分でも良くわかった。
そんなに向かい、リドルは憮然とした表情をし
て睨み付けて来た。
心なしか頬が薄くピンク色になっている。


「早く食べなよ」

それで我に返ったは、顔の表情を明るくさせ、
スプーンを手に取った。

「いただきます! ねぇリドル……ありがとう」


「はっ、何を急に言ってるの?」


「何となく、イタダキマスって言ってくれて嬉しかった
だけ」

それだけだと言うと、リドルは呆れたように肩を竦め
た。


「そんなので喜べるなんてお気らくだね、まったく」


「良いの! 何だか嬉しかったんだから、意味は無し!」


胸を張って言い切ると、リドルは小さく笑って、あっそ
何て素っ気無くご飯へと視線を返した。


「早く食べないと冷めるよ?」


「そうだった」

も慌ててオムライスを口に運んで行く。



其処へ、突然の数回の破裂音が響いた。



++++++



煙と軽い破裂音の後から現れたのは、先ほど何処かへ
走り去ったリオだった。



「リオっ! 何処言ってたの?」
は目を丸くしてリオへと駆け寄る。


「先ほどのお詫びと、リドル様の歓迎に、森に果物を取り
に言ってたでごじゃります」


そう言ったリオの持つ袋から、コロリと一粒の木苺が飛び
出してきた。
甘いいい匂いがする。
ソレはコロコロと転がってリドルの方へと向かっていた。


やっと、驚いて止まっていた体が動き出したリドルが、足
元まで転がってきた木の実を拾い上げ、戸惑いがちにリオ
へと近づいていく。


「リオ、ありがとう」



木苺を袋の中へ放ると、差し出された袋をしっかりと受け
取った。



「ありがとうだなどとっ!リオはリオはぁぁぁぁ」


耳が高速で動き、嬉しそうに飛び跳ねるリオ。

それを見て目を丸くするリドル。

そんな2人を見て、は楽しげに笑みを零した。


明日からもっと楽しくなるだろうと予感して。







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