真っ赤に沈んでいく夕日を見ながらリドルは思った。
こんなのも悪くないかもね……。
Across space-time and 09.2
洋服屋から出て、今は軽食でもと小さなレストランに入
った所だ。
少し混んだ店内の窓際に案内され、2人で向かい合って
座ると、早速はメニューと睨み合っている。
「……そんな睨まなくっても良いんじゃない?」
リドルは早々に決め、今はが決めるのを待つ
のみだった。
一方、は2つのメニューの間を視線が行ったり
来たり、かなり悩んでいるみたいだった。
昼食の時間を少し過ぎた時刻のせいもあり、店内の美味
しそうに食べる人達の様子を見るだけでも、お腹が鳴り
そうなリドルとしては、なるべく早く決めて欲しい。
「ん〜……店長のオススメか、日替わりメニューか迷っ
ててね」
エヘへと苦笑して、再びメニューの写真を眺めている。
そんなに、リドルが「なんだ」と呟くと、小
さい手を挙げ近くの店員を呼び寄せた。
「店長のオススメと、日替わりメニューをそれと紅茶2つ」
「かしこまりました、以上でよろしいですか?」
「はい」
呆然としているを無視して、さっさと頼み終
えたリドルは、にっこりと笑顔を浮かべる。
「僕が食べたいのは店長のオススメ、だったら2つ頼ん
で、半分に分けたらいいよ」
「いいの?」
「もちろん。僕が頼んだのに、駄目なんていう?」
「確かに……なら遠慮なく半分こにさせてもらうね」
の方が嫌がるなんてミジンコほども考えなか
ったが、あっさOKが出てリドルも少し驚いた。
なにより、自分の行動の方が不思議だったけど。
今まで、こんなふうに誰かと何かを分け合おう何て、考
えすらしなかった事だ。
新鮮な感覚だけれど悪くない。
そんなリドルを見て、が和んでいると、ぷぃ
っと目を逸らされてしまったけれど。
何でも無い事だ。
+++
そんな事をしている内に運ばれてきたメニューはかなり
美味しくて、2人してあっと言う間に食べ終えてしまっ
た。また来たい!そう思う味である。
また来よう。
そんな話をしつつ、リドルを引っ張り店外に出ると、
次ぎの目的地も無いためフラフラと店を冷やかして歩い
てみる。
そんな事をしていると、バフッと音を発てて誰かに激突
してしまった。
そんなを見て、慌てて腕を引っ張り立ち止ま
らせたリドルも衝撃に一歩後退する。
しっかりとリドルの手を握り締め。
恐る恐る見上げれば、の視界に見覚えの有る
顔が飛び込んできた。
……。
――……。
「ぁっ……ごめんなさい」
小さく呟いた声の後に、慌てて謝罪すると、目の前の
御仁はピクリと眉を持ち上げ、フンっと鼻を鳴らした。
「確りと前を見ろ」
渋い声。
そして、銀色の髪。
やっぱり、は確信して口を開いた。
「この間は道を教えてくれてありがとう御座いました」
「……」
男は暫く考えた後、思い出したのだろう、眉を顰める。
「……お前マグルでは無かったのだな」
あの時有った雰囲気より和らいだ空気に、成る程。
は心の中で頷いた。
純血主義な方だったのか。
「はい。一応魔法族な筈です」
満面の笑みで言えば、ますます眉間が危なげだ。
セブルスの一歩手前になっている。
「ふん、まったく近頃の物は……おや?この子は……」
「リドルです」
視線を向けられたリドルが、余所行き笑顔前回で微笑む
と。
「子供の方がよっぽど出来ているな」
「まあ確かに……」
「笑えない冗談だ。私はマルフォイ家当主、魔法族なら
覚えておく事だ」
そんなセリフを残し、バサリとマントを翻し踵を返す。
「私は・です!!」
一応名乗って手を振ると、溜め息の様な物を残し、マル
フォイ家当主は立ち去って言った。
「……あんな奴に自己紹介なんてしなくても
良かったのに」
「まあまあ」
ご立腹のリドルを宥めつつ、リオのお土産を購入して、
漏れ鍋へと向う。
今はもう太陽は夕日に変身している。
「そうだ、買ったお菓子食べながら帰ろうか?!」
「行儀悪いよ」
「良いから良いから」
無理やり光るペロペロキャンディーを手渡し、
も口に咥える。
「ねっ美味しいっしょ?」
「まあね……」
そんな感じで漏れ鍋まであっと言う間にたどり着く。
疲れたけれど楽しかった。
リドルもも家に着いたらもうクタクタで、
ぐったりとソファーに座りこんだ。